歯ぐきの「できもの」が消えない。根の先で何が起きている?|DIAGNOSTIC FILE 003

  1. 歯を残す研究所
  2. DIAGNOSTIC FILES
  3. FILE 003

DIAGNOSTIC FILE 003

歯ぐきの「できもの」が消えない。
根の先で何が起きている?

「痛くないなら、様子を見ましょう」
「根の治療は終わっていますから」

そう言われた。
でも、歯ぐきにできた小さなふくらみが、なくならない。
潰れると小さくなる。しばらくすると、また同じ場所に出てくる。
痛くはない。だから、かえって判断がつかない。

様子を見る前に。
その「できもの」は、どこから来ているのでしょうか。

01いまの状態

痛くない。
だから、このままでいいのか分からない。

歯ぐきに、ニキビのような小さなふくらみができる。押すと、白っぽい膿や、しょっぱい味が出ることがある。
潰れると平らになるのに、数日から数週間で、また同じ場所に出てくる。

根管治療を受けた歯の近くにできることもあれば、治療したことのない歯の近くにできることもあります。

  • 「痛くないなら、放っておいていいのか」
  • 「何度も繰り返すのは、悪くなっているから?」
  • 「薬を飲めば、なくなるのでは」
  • 「また根管治療か、それとも抜歯になるのか」

知りたいのは、フィステルの一般論ではないはずです。

「では、自分のこのできものは、どこから来ているのか。」

このページでは、そこを整理することから始めます。

02原因の整理

できものを消す前に、
「どこから来ているのか」を確かめる。

歯ぐきのできもの(フィステル、サイナストラクトとも呼びます)は、それ自体が病気というより、歯の根の周りにたまった膿の「出口」です。

出口があると、膿の圧が逃げるため、痛みが出にくいことがあります。痛くないことは、原因がなくなったことを意味しません。ただ、急いで治療が必要かどうかも、原因によって変わります。

出口がどこにつながっているかで、考えることが変わります。大きく分けると、次の3つがあります。

A根の中や、根の先の病気

根管治療で対処を検討できる範囲

  • 根管の中の感染が、根の先に広がっている
  • 以前の根管治療のあとに、再び感染している
  • 神経が気づかないうちに死んで、感染している

B歯の根や、歯ぐきの問題

  • 歯根のヒビ・破折
  • 歯周病による、歯ぐきの膿
  • 根の側面に開いた穴(穿孔)

C出口と、原因の歯がずれている

  • 隣の歯が原因になっている
  • 膿の通り道が、離れた場所に出ている
  • 歯とは別の、歯ぐきや粘膜のできもの

できものがどこにつながっているかで、
考えるべきことは変わります。

原因がAなら、根管治療(やり直しを含む)で対処を検討できる場合があります。Bは、原因によって判断が分かれます。Cは、出口の近くの歯を治療しても、できものが残ることがあります。だからこそ、治療の前に確かめます。

※原因の候補を整理した一例です。すべてを網羅するものではなく、症状や診査所見によって評価は異なります。

03確かめる順番

できものの出どころを、
どう確かめていくか。

  1. できものの位置と、繰り返し方を見る

    どの歯の近くか。歯ぐきの根元に近いか、根の先に近いか。いつから、どのくらいの間隔で繰り返しているか。腫れや痛みを伴うことがあるか。最初の手がかりになります。

  2. 膿の通り道をたどる

    できものの出口から、細いゴムのような材料(ガッタパーチャ)をそっと入れて、X線を撮ります。材料の先がどこに向かうかで、膿がどの歯の、どこから来ているかを確かめます。出口のすぐ上の歯が、原因とは限りません。

    出口

    通り道が根の先へ

    根の先の病気を考える。

    出口

    通り道が根の横の、浅いところへ

    破折や歯周病も考える。

    通り道の向かう先で、考える原因が変わります。(模式図:歯を頬側と舌側の方向に切った断面。左が頬側。点線は、できものから続く通り道)
  3. 歯の反応と、歯ぐきの溝を調べる

    根管治療をしていない歯なら、神経が生きているかを検査します。歯ぐきの溝の深さを歯の全周で測り、一か所だけ深い部分がないかを見ます。一か所だけの深い溝は、破折を疑う手がかりになります。

  4. 画像で、根の先と根の周りを見る

    X線で根の先の影を確認し、必要に応じてCTで、影の広がり、根の形、破折を疑う所見がないかを確認します。

  5. 治療で対処できる原因かを考える

    原因が根管の中の感染であれば、根管治療で対処を検討できる場合があります。破折や歯周病が原因なら、根管治療だけでは対処できないことがあり、治療しない選択も含めて考えます。

04実際の症例

消えないできもので、
何を確かめたか。

ここからは、実際の症例をひとつ取り上げます。治療がうまくいったかどうかではなく、何を見て、何を疑い、何を除外し、どう判断したかを記録しています。この症例では、最初の見立てが違っていました。そのことも含めて記録します。

CASE FILE 003掲載にあたり、ご本人の同意を得ています
年代・性別
40代・男性
部位
左上の奥歯(第一大臼歯)と、その手前の歯(第二小臼歯)
主な症状
「治療を続けても、歯ぐきのできものが消えない」。痛みはない。
これまでの経過
他院で、左上の奥歯(第一大臼歯)の根管治療を受けていた。治療を続けてもできものが消えず、専門医を探して、当院を受診した。

患者さんが最初に知りたかったこと

「治療しているのに、
どうして消えないのでしょうか?」

治療中の左上の奥歯の近くの歯ぐきにできた、できものの写真
初診時 治療中の奥歯(白い仮の詰め物)の近くの歯ぐきに、小さなふくらみ(矢印)があります。これが、膿の出口です。
初診時の左上の奥歯と手前の歯のデンタルX線写真
初診時のX線 真ん中の奥歯は、根管治療の途中です。丸は、見直したときに気づいた部分。手前の歯の被せ物の下に、神経に近いむし歯の影があります。
できものからガッタパーチャを入れて撮影したデンタルX線写真
通り道をたどったX線 できものから入れた材料(白い線)の先は、奥歯ではなく、手前の歯の根の先に向かっています。
根管充填後のデンタルX線写真
根管充填後 手前の歯(左)と、奥歯(真ん中)の根管に、根の先まで詰め物が入っています。

歯科医師 本山直樹の診断ノート

なぜ、原因の歯を見直したのか。

この症例で、実際に考えた順番です。

  1. 最初に疑ったこと

    できものは、根管治療の途中だった奥歯の根の先に近い位置にありました。位置と治療の経過から、まずこの奥歯が原因だと考え、根管治療を続けました。

  2. 治療を続けても、消えなかった

    奥歯の3本の根管を、根の先まで清掃しました。2回の治療を行っても、できものは消えませんでした。根管の清掃が足りないのか。それとも、そもそも原因の歯が違うのか。ここで、治療のやり方ではなく、出発点を疑い直しました。

  3. 通り道をたどった結果

    できものの出口からガッタパーチャを入れたままX線を撮りました。材料の先は、奥歯ではなく、手前の歯の根の先を指していました。できものの出口は奥歯の近くでも、膿は手前の歯から来ていたことになります。

  4. 手前の歯で見つかったもの

    手前の歯を調べ直すと、被せ物の下に、神経に近いむし歯がありました。初診時のX線を見直すと、その影は写っていました。被せ物の下のむし歯は、外からは見えず、奥歯の治療に目が向いていると見落としやすい場所です。神経の検査(電気診)では反応がなく、神経はすでに死んでいる状態でした。

  5. 判断:原因の歯を見直した理由

    通り道の向かう先と、被せ物の下のむし歯。2つが同じ歯を示していたことから、できものの原因は手前の歯だと判断し、手前の歯の根管治療を始めました。

    振り返ると、最初に通り道をたどっていれば、もっと早く手前の歯に気づけた可能性があります。できものの位置だけで原因の歯を決めない。この症例から、あらためて学んだことです。

その後の経過

手前の歯の根管治療を始めると、それまで消えなかったできものは消えました。原因だった歯の感染に対処したことで、膿の出口がふさがったと考えています。

この症例で行った治療について

治療内容
奥歯(第一大臼歯)と手前の歯(第二小臼歯)の根管治療、土台の作製(築造)、被せ物
費用
1本あたり、根管治療165,000円、築造27,500円、被せ物165,000円。処置料11,000円/回(すべて税込、この症例は2本)
期間・回数
根管治療:奥歯3回、手前の歯2回(1回90分)
主なリスク
根管治療を行っても、根の先の病気が残ることがあります。その場合は、根管治療のやり直し、外科的な歯内療法、抜歯を検討することがあります。

同じ「歯ぐきのできもの」でも、
別の歯では、別の結論になることがあります。

05考え方

歯を残すことと、
何でも治療することは、同じではありません。

  • 治療法から入らない

    まず、今の症状と診査所見を整理します。

  • 「残せるか」だけで決めない

    残したあと、その歯で噛み続けられるかまで考えます。

  • 決めるための材料を渡す

    治療する・しないを含めて、判断に必要な情報をお伝えします。

06ご自身の歯について

では、
私の歯の場合は?

このページだけで、あなたの歯を診断することはできません。同じ「歯ぐきのできもの」でも、できものの位置、膿の通り道、歯の状態によって、考えるべきことは変わるからです。

痛みがないと、受診を後回しにしがちです。様子を見続ける前に。そして、治療を急ぐ前に。できものがどこから来ているのかを確かめる。そのための対面セカンドオピニオンです。

セカンドオピニオン(対面)

治療を受けるかどうかを、決めるための60分。

  • これまでの治療の経過と、今の症状をうかがいます
  • CT等で、歯とその周りの状態を確認します
  • 考えられる原因と選択肢を、治療をしない選択も含めてご説明します
時間
60分
費用
22,000円(税込)CT等の診査費を含みます
場所
ラウムデンタルクリニック川崎市中原区上小田中5-2-5 ラウム武蔵中原A棟1階
JR南武線 武蔵中原駅 北口 徒歩1分
診療日
火曜・日曜・祝日

相談だけで終えても構いません。
その場で治療を決める必要はありません。

ネット予約の方法

  1. 先に、下の言葉をコピーしておきます。
  2. ボタンから医院のページを開き、ネット予約に進みます。
  3. 日付は火曜・日曜・祝日からお選びください。(本山の診療日です)
  4. 予約フォームの「備考」や「ご要望」など、自由に書ける欄に、コピーした言葉を貼り付けてください。
本山先生 セカンドオピニオン希望

この記入がないと、一般の診療として予約され、本山の相談枠になりません。

医院のネット予約を開く

お電話の場合044-751-8217「本山先生のセカンドオピニオン希望」とお伝えください。

自由診療(保険適用外)です。診査の結果により、ご提案する内容は異なります。

歯科医師 本山直樹

監修・診療

歯科医師 本山直樹

歯内療法(根管治療)を中心に診療しています。

根管治療は、やり直すたびに歯を削り、その歯を残せる余地を少しずつ減らしていきます。だからこそ、次に何をするかは、「どう治療するか」ではなく、「なぜそうなっているのか」から決めたいと考えています。後悔する抜歯を減らすために、私がいちばん時間をかけているのは、治療の前の診断です。

略歴
  • 2004年 神奈川歯科大学 歯学部 卒業
  • 2022年 日本歯内療法学会 歯内療法専門医 取得
  • 2023年 医療法人社団玲瑠会 ラウムデンタルクリニック 非常勤
  • 日本大学 松戸歯学部 歯内療法学講座 研究生
  • 歯科医師臨床研修 指導医
所属学会
  • 日本歯内療法学会
  • 日本臨床歯科CADCAM学会

本ページは、歯ぐきのできもの(フィステル)についての一般的な情報と、実際の症例での考え方を紹介するものです。個々の歯の状態は、診察・検査を行わなければ判断できません。